調剤の仕事に区切りをつけて、製薬会社や企業で働きたい。薬剤師のキャリア相談では、昔からよく出てくる希望です。ただ、統計を見ると、企業で働く薬剤師の数はこの2年で減っています。厚生労働省の令和6年の統計では、医薬品関係企業に従事する薬剤師は34,184人で、前回から2,902人、7.8%減りました。同じ期間に薬局で働く薬剤師は3.5%増えています(出典: 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」)。この記事では、企業の中身を内訳で分け、薬剤師の資格が法律上必要とされる仕事を確認したうえで、調剤から企業へ移る前に整理しておきたいことをまとめます。

「企業」の中身を内訳で見る
ひとくちに企業といっても、統計ではいくつかに分かれています。令和6年12月31日時点の人数と、2年前との比較は次のとおりです。
| 従事先 | 人数 | 前回比 |
|---|---|---|
| 医薬品製造販売業・製造業(研究・開発、営業、その他) | 24,102人 | −1,684人(−6.5%) |
| 店舗販売業 | 5,090人 | −1,056人(−17.2%) |
| 卸売販売業 | 4,959人 | −170人(−3.3%) |
| 医薬品関係企業 合計 | 34,184人 | −2,902人(−7.8%) |
いちばん大きいのは製薬会社を中心とする製造販売業・製造業で、企業で働く薬剤師のおよそ7割にあたります。統計の注記によれば、ここには製薬会社とその研究所、血液センターなどが含まれます。研究・開発だけでなく、営業やその他の業務に就いている人もこの区分に入ります。
減り方がもっとも大きいのは店舗販売業で、2年で17.2%減りました。統計は減った理由までは示していません。ただ、制度の面で押さえておきたい点があります。薬機法28条は、店舗販売業の店舗管理者を「薬剤師又は登録販売者」と定めています。店舗の管理そのものは、薬剤師でなくても務まる仕組みになっています。
合計で見ると、企業は薬剤師全体の1割ほどの小さな職場です。 届出薬剤師329,045人のうち、薬局が197,437人と6割を占めるのと比べると、求人の数そのものが違います。
年齢構成から見えること
同じ統計には、施設の種別ごとの年齢構成も載っています。医薬品関係企業で働く薬剤師の平均年齢は49.1歳で、年齢階級では50〜59歳がもっとも多くなっています。29歳以下が占める割合は8.7%で、薬局の12.0%、病院の16.7%より低い数字です。
この数字から、企業が若手を採らないと言い切ることはできません。在籍者の年齢構成は、採用だけでなく定着の長さも反映するからです。ただ、企業は入れ替わりが少なく、空く席が限られた職場だという見方とは矛盾しません。人数が減っている中で、長く勤める人が多いのであれば、中途で入れる枠は多くないと考えておくほうが現実的です。
薬剤師であることが法律で求められる仕事
企業で働く薬剤師の仕事は幅広く、営業や研究のように資格がなくても就ける仕事も多くあります。その一方で、薬機法が薬剤師を置くよう定めている役割もあります。
1つは、製造販売業者の品質管理と製造販売後安全管理です。薬機法17条は、医薬品の製造販売業者に対して、これらを行わせるために薬剤師を置くよう求めています。一定の場合には薬剤師以外の技術者で代えることも認められていますが、原則は薬剤師です。
もう1つは、卸売販売業の営業所の管理です。薬機法35条は、卸売販売業者が営業所ごとに薬剤師を置いて管理させるよう定めています。取り扱う医薬品によっては例外がありますが、医薬品卸の各営業所には、原則として管理薬剤師がいます。
資格が法律で求められる仕事は、調剤経験を持つ薬剤師が入りやすい入口になります。 医薬品の品質や法令の知識、現場での医薬品の扱いを知っていることが、そのまま業務に結びつくからです。卸売販売業の薬剤師は2年で3.3%の減少にとどまり、企業の中では比較的落ち着いた動きです。
調剤から企業へ移る前に整理したいこと
企業への転職を考えるとき、仕事の中身と同じくらい、働き方の変化を具体的に想像しておく必要があります。
収入の形は変わります。薬局では薬剤師手当や管理薬剤師手当が給与に含まれていることが多い一方、企業では職位や評価で決まる部分が大きくなります。提示額の総額だけでなく、何によって上がるのか、何年でどこまで上がるのかを確認してください。
勤務地と転勤の有無も重要です。製薬会社や卸は全国に拠点を持つ会社が多く、職種によっては転勤が前提になります。家族の事情で勤務地を動かせない場合、この条件だけで選択肢が大きく絞られます。
戻れるかどうかも、先に考えておくべき点です。 企業で数年働いたあと、再び調剤の現場に戻る人もいます。そのとき、調剤から離れていた期間の説明と、手技や知識の更新が求められます。企業で何を身につけ、それが現場でどう生きるのかを言葉にできるかどうかで、戻りやすさは変わります。
最後に、なぜ企業なのかを自分の言葉にしておいてください。「調剤がつらい」が理由の中心であれば、職場を変えることで解決する可能性もあります。薬局の不満の整理は調剤薬局を辞めたいと思ったらにまとめています。企業に移りたい理由が「医薬品の品質や安全に関わりたい」「製品を広く届ける側に回りたい」といった仕事の中身にあるなら、面接でもそのまま伝わります。
よくある質問
調剤経験だけで製薬会社に転職できますか
職種によります。研究・開発は専門分野の経験や学位を求められることが多く、調剤経験だけで入るのは難しい領域です。一方で、品質管理や安全管理、医薬品の情報提供など、医薬品の知識と現場経験が生きる職種もあります。求人ごとに求める経験が違うため、職種名だけでなく業務内容を確認してください。
医薬品卸の管理薬剤師はどんな仕事ですか
薬機法35条にもとづき、営業所ごとに置かれて営業所を管理する役割です。医薬品の品質管理や保管の管理、法令の遵守に関わります。調剤とは業務が大きく異なり、患者と直接話す機会はほとんどなくなります。その点を働き方の変化として受け止められるかを考えておくとよいでしょう。
企業に移ると年収は上がりますか
一概には言えません。企業は職位や評価によって差が大きく、薬局で手当を含めて得ていた額と比べると、最初は下がることもあります。数年後の見込みや福利厚生まで含めて比べることをおすすめします。薬剤師の年収の考え方は薬剤師が年収を上げる現実的な方法も参考にしてください。
まとめ
- 医薬品関係企業で働く薬剤師は34,184人で、2年で7.8%減った。薬局は同じ期間に3.5%増えている
- 内訳は製造販売業・製造業が24,102人(−6.5%)、店舗販売業が5,090人(−17.2%)、卸売販売業が4,959人(−3.3%)
- 企業の薬剤師は平均49.1歳で、29歳以下の割合は8.7%と薬局より低い。空く席は多くないと考えておくほうが現実的
- 薬機法は、製造販売業の品質管理・安全管理(17条)と卸売販売業の営業所管理(35条)に、原則として薬剤師を置くよう定めている
- 移る前に、収入の決まり方、転勤の有無、現場へ戻る道、企業を選ぶ理由を整理しておく
参考にした一次資料
本文の統計と条文は、これらの原典を編集部が直接確認したうえで引用しています。数値は調査年の更新に合わせて見直します。
制度や規定に関する記載は一般的な説明です。詳細は勤務先の規定や専門家にご確認ください。
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