「入ってしまった以上は我慢するしかないのでしょうか」。先に答えます。そんなことはありません。条件が違うと感じたときに、確かめて、伝えて、それでも変わらなければ離れる。その道筋は、法律の上でも用意されています。ただ、動き方には順番があります。いきなり辞めると決める前に、何が違うのかを正確にすることが先です。この記事では、法律が定めていること、書面と口頭の違い、職場への伝え方、辞める場合の考え方を順に整理します。
労働条件について法律が定めていること
労働基準法15条1項は、使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。賃金や労働時間など一定の事項は、書面などの決められた方法で明示する必要があります。入職のときに受け取る労働条件通知書や雇用契約書が、これにあたります。
そして同条2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除することができると定めています。通常、退職には一定の予告期間が必要ですが、この場合はそれを待たずに辞められる、ということです。
さらに同条3項は、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければならないとしています。転職のために引っ越した人にとっては、知っておく価値のある規定です。
ここで大切なのは、この条文が対象にしているのが「明示された労働条件」だという点です。何が明示されていたかを確かめることが、すべての出発点になります。
書面に書かれていたことか、口頭の説明か
「夜勤は月4回程度」「配属は外科病棟」。この2つが、どこに、どう書かれていたかを確認してください。
労働条件通知書や雇用契約書を出して、就業の場所、従事する業務の内容、勤務時間、夜勤に関する記載を読みます。求人票や、面接後に受け取ったメールも一緒に見てください。
書面に「夜勤月4回」「外科病棟」と書かれているのに、実際が違うのであれば、明示された条件との相違がはっきりしています。15条2項が当てはまりやすい状況です。
書面には「夜勤あり」「配属は病院の定めるところによる」のように幅のある書き方しかなく、月4回や外科という話は面接での口頭の説明だけだった、という場合もよくあります。この場合、口頭の説明に意味がないわけではありませんが、相違を示すことは難しくなります。だからこそ、面接で聞いた内容をメモやメールで残していたかどうかが効いてきます。 残っていなければ、いまからでも、面接の日付と聞いた内容を思い出して書き留めておいてください。
どちらの場合でも、あなたが「聞いていた話と違う」と感じていること自体は正当です。違いは、どの手段が使えるかにあります。
職場への伝え方
師長の「しばらくはこれでお願いしたい」という言葉には、期限がありません。ここを具体的にしてもらうことが、最初の一歩です。
伝えるときは、不満としてではなく、確認として切り出します。「入職時に夜勤は月4回程度、配属は外科と伺っていました。現在の状況は、いつまで続く見込みでしょうか」。責める言い方にせず、聞いていた内容と現状を並べて、見通しを尋ねてください。
そのうえで、こちらの希望を数字で伝えます。「夜勤は月5回までであれば対応できます」「外科への異動は、いつごろ可能でしょうか」。できることとできないことをはっきりさせると、相手も調整しやすくなります。
話した内容は、その日のうちにメモに残すか、確認のメールを送っておきます。「本日お話しした件、夜勤は◯月から月◯回に戻る見込みと理解しました」という形です。口頭のやりとりだけだと、人が替わったときに話が消えてしまいます。
師長の段階で見通しが示されない場合は、看護部長や、採用のときに窓口だった人事の担当者に相談してください。採用時の説明に責任を持つのは、病棟ではなく病院です。
辞めるかどうかを考えるとき
話し合っても変わらない、あるいは「しばらく」がいつまでも続く。そのときは、離れることを考えて構いません。
すぐ辞めたら次が見つからないのでは、という不安はもっともです。ただ、1か月で辞めた理由が「入職時に聞いていた条件と実際が違っていた」であれば、面接で説明できる理由になります。前の職場を悪く言うのではなく、事実として「夜勤は月4回程度と伺っていましたが、実際は7回でした。確認と相談をしましたが、見通しが示されませんでした」と伝えれば十分です。退職理由の伝え方は看護師の面接で退職理由をどう伝えるかで整理しています。
次の職場を探すときは、同じことを繰り返さないための確認をしてください。夜勤の回数と配属を、労働条件通知書に具体的に書いてもらえるか。書けないと言われたら、その理由を聞く。面接で聞いた内容は、その日のうちにメールで確認する。口頭の説明を書面にしてもらう一手間が、いちばんの予防になります。
判断に迷う場合は、各地の総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談できます。労働条件通知書と、実際の勤務表を持っていくと話が早く進みます。
体調に影響が出ているなら、順番が変わります。眠れない、食べられないといった状態が続いているときは、話し合いの前に休むことを優先してください。
同じ状況にいる方へのチェックリスト
- 労働条件通知書と雇用契約書で、就業場所、業務内容、夜勤に関する記載を確認したか
- 求人票、面接後のメールなど、説明の内容が残っているものを集めたか
- 面接で聞いた内容を、日付つきで書き留めたか
- 師長に、現在の状況がいつまで続くかの見通しを尋ねたか
- 自分が対応できる夜勤の回数や、配属の希望を数字で伝えたか
- 話した内容をメモやメールで残しているか
- 師長で止まる場合、看護部長や人事に相談したか
- 辞める場合、次の職場では条件を書面にしてもらう確認をする準備をしたか
制度や規定に関する記載は一般的な説明です。個別の状況については、労働基準監督署などの公的窓口や専門家にご確認ください。
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