薬剤師お悩み相談

パートのまま続けるか、正社員に戻るか。決められません【薬剤師のお悩み相談】

パート勤務と家庭の時間を天秤で比べる薬剤師と二つの吹き出しのイラスト

相談内容

30代後半の薬剤師です。子どもが2人いて、下の子はまだ保育園に通っています。調剤薬局でパート勤務を始めて3年目です。保育園のお迎えに間に合う今の働き方には本当に助けられているのですが、下の子の進学や家計のことを考えると、そろそろ正社員に戻るべきではないかと焦ります。同世代の正社員の薬剤師を見かけると、自分だけ置いていかれているような感覚になります。ただ、正社員に戻れば残業やシフトの融通が利かなくなるのも分かっていて、決められないまま数ヶ月が過ぎました。夫は『好きにしていいよ』と言ってくれますが、それでは決め手になりません。家庭を優先したいだけなのに、『キャリアを諦めた人』と思われるのが怖いのかもしれません。決められない私は、優柔不断なのでしょうか

※ 相談内容は、よく寄せられる悩みをもとに編集部で再構成したものです

編集部の回答(結論)

優柔不断ではありません。収入という数字と、お迎えに間に合う日常は、そもそも同じ天秤に載らないものだからです。この選択は一度きりの決断ではなく、子どもの年齢とともに条件が変わり続けるもので、いま決め切れないのは状況が動いているからにすぎません。中間の段階も含めて、選択肢を並べ直すところから始めましょう。

「決められない私は、優柔不断なのでしょうか」という問いから答えます。優柔不断ではありません。この選択が難しいのは、比べているものの単位が違うからです。正社員に戻ったときの収入や賞与は数字で見えます。一方、お迎えに間に合う働き方や、急な発熱にすぐ動ける余裕は日常の側にあって、数字になりません。数字と日常は、同じ天秤には載らない。載らないものを無理に載せようとして、天秤が揺れ続けている。数ヶ月決められないことの正体はそれで、判断力の問題とは別の話です。順に整理していきます。

「決められない」が普通である理由

この悩みを「いま一度きりの決断を下すべき場面」と捉えると、苦しくなります。実際にはそうではありません。下の子が保育園を出て、小学校に上がり、放課後の預け先が変わり、と家庭側の条件はこの先も数年ごとに動き続けます。今日ベストな答えが、二年後もベストである保証はどこにもありません。

つまりこれは、一度決めたら終わりの分岐点ではなく、条件が変わるたびに置き直せる可動的な選択です。動いている的に狙いを定め切れないのは当然のことで、いま決め切れないのは、状況がまだ動いているからです。「決められない自分」を責める必要はありません。むしろ、動き続ける前提で「いまの条件ではどう置くか」「次に見直すのはいつか」と考えるほうが、この選択の性質に合っています。

パートを続けることの価値を正確に見積もる

焦っているとき、人はいま手元にあるものの価値を低く見積もりがちです。まず、パートという働き方があなたの家庭にもたらしているものを、正確に数え直してみてください。

お迎えに間に合う勤務時間。子どもの急な体調不良に対応できる余地。行事や長期休みに合わせて調整できる融通。これらは家計簿のどこにも載りませんが、いま家庭が回っていることの土台です。誰かがこの役割を担わなければ家庭は回らず、外部に頼めば別の負担が生じます。載らないだけで、価値がないわけではありません。加えて、薬剤師のパートは資格職として時給水準が比較的高い働き方でもあり、時間あたりで見れば決して「細々とした働き方」ではありません。

もうひとつ確認しておきたいのは、あなたのキャリアは止まっていない、ということです。パート3年目のあいだも、調剤と服薬指導の実務は続いています。新しい薬にも処方の変化にも、現場で触れ続けている。離職して現場を離れることと、パートで働き続けることは、まったく別物です。「パート=キャリアの停止」という等式は、まず疑ってかかってください。

正社員に戻る場合に本当に変わるもの

一方で、正社員に戻ることで変わるものも正確に見ておきます。まず変わるのは収入の構造です。月々の給与に加えて賞与があり、昇給や登用の対象になる。長い目で見た家計への効きは、時給の差以上のものになり得ます。責任ある持ち場を任される機会も増えるでしょう。

引き換えに何を差し出すことになるか。ここは「残業が増えて融通が利かなくなる」と一括りにされがちですが、実際は職場によって幅があります。正社員でも子育て中の職員のシフトに配慮する体制が根づいている職場もあれば、パートにも土日勤務や遅番を求める職場もあります。つまり「正社員=融通ゼロ」でも「パート=気楽」でもなく、雇用形態そのものより、職場の体制が実際の働きやすさを決める部分が大きいのです。正社員に戻るかどうかを考えるときは、雇用形態の一般論ではなく、「その職場の正社員がどう働いているか」を具体的に見る必要があります。

「いつ戻るか」の考え方

戻る時期を考える軸は二つあります。ひとつは家庭側の軸で、子どもの年齢や学校の区切りです。下の子の小学校入学、学童の終わり、といった節目は、働き方を見直す自然なタイミングになります。もうひとつは職場側の軸で、受け入れ体制です。時短勤務の正社員制度があるか、登用の実績があるか。家庭の準備が整っても、受け皿がなければ選択肢になりません。

そして、パートかフルタイム正社員かの二択で考える必要もありません。パートのまま勤務日数を増やす。制度のある職場なら時短正社員として戻る。そのうえで、いずれフルタイムに移る。二択に見えている道の途中には、中間のステップがいくつもあります。段階を踏めば、家庭の変化に合わせて少しずつ荷重を移せます。

具体的な一歩としては、いまの職場に正社員登用の道があるか、時短正社員の制度があるかを聞いておくことをおすすめします。聞いたからといって戻る義務は生じません。ただ、「いつでも使える選択肢がどこにあるか」が分かるだけで、漠然とした焦りは具体的な検討に変わります。

「置いていかれる」感覚への応答

最後に、同世代の正社員薬剤師を見たときのあの感覚に触れておきます。

比べる相手を変えてください。同世代の正社員ではなく、1年前の自分です。1年前より扱いに慣れた薬があるか、患者への説明で工夫が増えたか。そこで前に進んでいるなら、あなたは置いていかれていません。歩く速さの違う人と並走して距離を測っても、出てくるのは焦りだけです。

管理薬剤師や認定薬剤師といったキャリアの積み上げは、働き方を戻してからでも始められます。順番が人より遅れることと、道が閉ざされることは違います。そして繰り返しになりますが、あなたには実務の中断がありません。長いブランクからの復職に悩む相談が編集部には数多く届きますが、あなたはその入口に立つ必要すらない。実務を続けてきたこと自体が、いつ戻るかを自分のペースで選べる立場を作っています。それは焦りの材料ではなく、持ち札です。

同じ状況にいる方へのチェックリスト

  • 家計について「いくらあれば回るか」の下限ラインを具体的に把握しているか
  • いまの職場に正社員登用の道や時短正社員の制度があるか、確認したか
  • 家事・育児の分担を、働き方が変わる前提でパートナーと話し合ったか
  • 「下の子が何歳になったら」という家庭側の目安を仮でも置いてみたか
  • 「いまは決めない」と期限つきで意識的に決める選択肢を検討したか

制度や規定に関する記載は一般的な説明です。詳細は勤務先の規定や専門家にご確認ください。

関連記事: 薬剤師の派遣・単発という働き方|向いている人と注意点 関連記事: ブランク10年、実務経験は2年だけ。いまから調剤に戻れますか【薬剤師のお悩み相談】

執筆

白衣キャリア編集部

看護師・薬剤師の転職と働き方に関する情報を、中立の立場で整理して届ける編集チームです。記事は編集方針に基づいて制作し、公開前に法令・広告表示のチェックを行っています。制度・統計に関する記述は一次情報を確認のうえ掲載し、公開後も定期的に見直しています。運営会社: 株式会社プロフィット(運営担当: 内藤 啓)

プロフィールを見る