「このままで大丈夫でしょうか」という問いに、先に答えます。大丈夫とは言えません。ただし、あなたに落ち度があるという意味ではありません。問題は、法律が薬局に求めている管理者の置き方と、いまの店舗の実態がずれていることにあります。そのずれの中で、責任だけがあなたに寄っている。この記事では、薬局の管理者について法律が定めていることを確認し、名前だけの管理者との違い、本部への伝え方、それまでの間に自分を守る方法を整理します。
薬局の管理者について法律が定めていること
薬局の管理者については、医薬品医療機器等法(薬機法)7条に定めがあります。薬局開設者が薬剤師でない場合、開設者は「その薬局において薬事に関する実務に従事する薬剤師のうちから」薬局の管理者を指定して、その薬局を実地に管理させなければならないとされています(同条2項)。
ここで大切なのは2つの言葉です。1つは「その薬局において実務に従事する薬剤師のうちから」。**管理者は、その店舗で働いている薬剤師の中から選ばれることが前提です。**もう1つは「実地に管理」。書類の上で名前を置くことではなく、現場で管理することが求められています。
さらに同法8条は、管理者の義務を定めています。管理者は、薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、構造設備や医薬品などの物品を管理し、業務について必要な注意をしなければなりません(同条1項)。加えて、業務について薬局開設者に対し、必要な意見を書面で述べなければならないとされています(同条2項)。
別店舗にいて一度も来ない人が「実地に管理」し「従業者を監督」することは、条文の言葉どおりには成り立ちません。 いまの店舗の形は、法律が想定している管理の形から外れている可能性が高いと考えられます。
名前だけの管理者と、実際に管理している人のずれ
相談の中で、いちばん危ういのはこの点です。
管理者としての義務を負っているのは、法律上は書類に名前のある薬剤師です。ところが、実際の管理業務はあなたが行っている。この状態で何かが起きたとき、何が問題になるかは場面によって変わりますが、少なくとも次のことは言えます。
- あなたは管理者としての権限を正式には持っていません。開設者に書面で意見を述べる立場も、従業者を監督する立場も、法律上はあなたのものではありません
- それでも、実際に判断し、実際に管理しているのはあなたです。結果への関わりを問われたとき、「権限がなかった」という説明が、そのまま通るとは限りません
権限がないのに責任だけがある状態は、あなたにとってもっとも不利な形です。 手当が出ていないという点は、その状態を象徴しています。管理の仕事を求めるなら管理者として指定して手当を出す、指定しないなら管理の仕事を求めない。本部にはどちらかを選んでもらう必要があります。
なお、麻薬の管理については、麻薬及び向精神薬取締法にもとづく麻薬管理者の制度が別にあり、薬局の管理者とは仕組みが異なります。誰が麻薬管理者として届け出られているかも、あわせて確認してください。
本部への伝え方
「不安です」と伝えるだけでは、「しばらく頑張って」で終わりがちです。次の形で出すことをおすすめします。
まず、いま自分が行っている管理の業務を書き出します。発注と在庫管理、麻薬・向精神薬の管理、行政への対応、他の従業者への指示、設備の点検。日付と内容を添えて、事実として並べてください。
次に、その一覧を示したうえで、2つの選択肢を提示します。1つは、あなたを正式に管理者として指定し、手当を含めた条件を整えること。もう1つは、正式な管理者を早急に配置し、それまでの間、管理者の判断が必要な業務は書類上の管理者に確認してから進める運用にすること。
あなたが管理者になることを望まないなら、そう伝えて構いません。管理者を引き受けるかどうかの考え方は管理薬剤師を経験3年で打診されましたに整理しています。引き受ける場合も、条件をあいまいにしたまま始めないでください。
やりとりは、口頭で終わらせずメールなどで残します。「いつ、誰に、何を伝え、どう返ってきたか」が残っているかどうかで、後の話の進み方が変わります。
それまでの間、自分を守るためにできること
本部が動くまでの間も、店舗は毎日回ります。その間、次のことを続けてください。
判断した内容を記録に残すこと。 特に、管理者の判断が必要な場面で自分が決めたことは、日付、内容、なぜそう判断したかを書いておきます。書類上の管理者に確認を取れた場合は、その事実も残します。
管理者でなければできないことを、自分で引き受けないこと。開設者への書面での意見は、8条2項が管理者に課している義務です。設備や体制に問題があると感じたら、あなたの名前で書面を出すのではなく、書類上の管理者を通すよう本部に求めてください。それが機能しないなら、機能しないという事実そのものが、正式な管理者を置く必要性の根拠になります。
一人で回す店舗の負担が有給休暇や体制の問題として現れているなら、人手が足りず、有給休暇が取れませんと実質一人薬剤師で不安ですの回答も参考になります。
改善の見込みがないまま長く続くなら、環境を変えることも正当な判断です。次の職場では、管理者の配置の実態と、管理者が不在になったときの本部の対応の実績を、面接で具体的に聞いてください。
同じ状況にいる方へのチェックリスト
- 書類上の管理者が誰で、その人が店舗の実務に従事しているかを確認したか
- 自分が行っている管理業務を、日付つきで書き出したか
- 麻薬管理者として届け出られているのが誰かを確認したか
- 本部に「正式な指定と条件」か「正式な管理者の早期配置」かの二択で伝えたか
- やりとりをメールなど記録に残る形にしているか
- 管理者の判断が必要な場面で、自分が決めた内容と理由を記録しているか
- 開設者への書面での意見を、自分の名前で出していないか
- 改善の見込みがない場合の、次の職場で確認する項目を用意したか
制度や規定に関する記載は一般的な説明です。個別の状況については、勤務先の規定、所轄の保健所、専門家にご確認ください。
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