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派遣薬剤師から正社員に戻れるか|法律が用意している3つの出口と、戻る前提で派遣を使う条件

派遣から派遣以外の働き方へ進む道を考える薬剤師のイラスト

「派遣は時給がいいけれど、一度出ると正社員には戻れない」。派遣を検討している薬剤師が、周囲からよく言われる言葉です。ただ、この話を条文で確かめると、様子が変わります。労働者派遣法には、派遣で働く人が派遣以外の雇用へ移るための仕組みが複数書き込まれていて、そのうちいくつかは派遣会社の義務として定められています。知られていないだけで、出口は用意されています。この記事では、法律が定めている3つの出口を確認し、そのうえで選考で実際に見られる点と、戻る前提で派遣を使うなら先に決めておきたい条件を整理します。

雇用安定措置、紹介予定派遣、期間制限から次の雇用へ進む三つの経路の図解

「戻れなくなる」と言われる理由を分ける

まず、この言い回しの中身を分けておきます。混ざったまま扱うと、対処のしようがありません。

1つ目は、経験の中身が薄くなるという指摘です。派遣は欠員の補充として入ることが多く、調剤と投薬が中心になりやすい。在庫管理、レセプト、指導や採用、店舗運営といった業務から離れる期間が長くなると、正社員の選考で語れる材料が減ります。これは実際に起きうることで、否定できません。

2つ目は、働き方に戻れなくなるという指摘です。時給換算の収入、勤務日を選べる自由、残業や店舗運営の責任から離れた状態に慣れると、正社員の条件が窮屈に見える。これは本人の選択の問題であって、制度の問題ではありません。

3つ目が、制度として道が閉ざされているという理解です。これは事実と違います。派遣から派遣以外の雇用へ移る筋道は、派遣法に明記されています。以下で順に見ていきます。

分けて考えると、対処すべきは1つ目だけだとわかります。2つ目は自分の希望の問題、3つ目は誤解です。

出口1:派遣元の雇用安定措置(派遣法30条)

これが最も知られていない仕組みです。

派遣法30条1項は、派遣元事業主に対して、同じ派遣先の同じ組織単位で継続して1年以上働く見込みのある有期雇用の派遣労働者について、次のいずれかの措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。

  • 派遣先に対して、その派遣労働者に労働契約の申込みをすることを求めること
  • 派遣労働者として就業できるよう、新たな就業機会を確保して提供すること
  • 派遣労働者以外の労働者として、期間を定めないで雇用する機会を確保して提供すること
  • 教育訓練など、雇用の安定を図るために必要な措置を講ずること

1つ目は、派遣先に直接雇用してもらえないか依頼することです。3つ目は、派遣会社自身が無期雇用で雇う道です。どちらも「派遣から抜ける」方向の措置として、条文に書かれています。

そして30条2項が重要です。同じ組織単位で継続して3年間働く見込みのある人については、1項の「講ずるように努めなければならない」が「講じなければならない」に読み替えられます。努力義務が義務に変わるということです。

つまり、3年の見込みが立つ段階で、派遣会社には次の雇用につなぐ措置を取る法的な義務が生じます。「戻れない」どころか、戻すための手続きが制度に組み込まれている。この措置を知っているかどうかで、派遣会社との話し方が変わります。

実務では、担当者から説明がないまま契約が終わることもあります。契約更新の面談の際に、雇用安定措置の対象になるのはいつからか、どの措置を想定しているかを確認してください。聞かれて困る質問ではありません。

出口2:紹介予定派遣(派遣法2条4号)

紹介予定派遣は、派遣期間の前か途中に職業紹介を行うこと、または行う予定であることを前提にした派遣です。一定期間働いたうえで、双方が合意すれば直接雇用に切り替わります。

薬剤師にとって、この仕組みにはもう一つの意味があります。労働者派遣法施行令2条3号は、病院・診療所・介護医療院で行われる調剤の業務を派遣禁止業務として挙げています。病院薬剤師として派遣で働くことは、原則としてできません。ところが同条は、紹介予定派遣をする場合をこの禁止から除いています。産前産後休業・育児休業・介護休業の代替や、へき地での就業も同様に除かれます。

言い換えると、紹介予定派遣は、通常の派遣では入れない病院という職場への入口にもなります。職場の様子を見てから決めたいが、いきなり応募するのは不安、という状況では選択肢に入ります。

ただし、紹介予定派遣は直接雇用が約束された仕組みではありません。期間終了時に双方の合意が必要で、断られることも、こちらから断ることもあります。求人数も通常の派遣より限られます。過度な期待はせず、入口の一つとして扱ってください。

出口3:3年の期間制限(派遣法35条の3)

派遣法35条の3は、派遣元事業主は同じ組織単位の業務について3年を超えて同一の派遣労働者を派遣してはならないと定めています。無期雇用の派遣労働者などは対象外ですが、有期で働く場合は3年で区切りが来ます。

この制限は、長く働きたい人から見れば不便な規定です。一方で、3年ごとに条件を選び直す機会が来る仕組みでもあります。前述の雇用安定措置の義務が生じるのも、まさにこのタイミングです。3年目を「追い出される時期」ではなく「条件を交渉する時期」として先に位置づけておくと、動き方が変わります。

選考で実際に見られる3つのこと

制度の出口が用意されていても、選考は別の話です。正社員の求人に応募するとき、派遣経験がどう見られるかを整理しておきます。

1つ目は、期間ではなく中身です。「派遣で3年」という事実そのものより、その間に何を扱ったかが問われます。処方せんの枚数規模、応需していた科目の幅、在宅対応の有無、扱った剤形や無菌調製の経験。複数の薬局を回った人は、立ち上げ直後の店舗や応援要員として入った経験を語れることがあり、これはむしろ強みになります。

2つ目は、なぜ派遣を選び、なぜ戻るのかの説明です。育児や介護、家族の転勤、自分の体調、資格取得のための時間確保。理由があるなら、そのまま伝えて構いません。問題になるのは、理由を語れないことと、前の職場の不満だけで説明を終えることです。転職理由の伝え方については看護師の面接で退職理由をどう伝えるかで扱った考え方が、薬剤師にもそのまま当てはまります。

3つ目は、正社員として担う業務への構えです。在庫管理、レセプト点検、後輩の指導、シフト作成、監査対応。派遣中に離れていた業務があるなら、そこを避けずに「いまは離れているが、以前はこう担当していた」「戻るにあたって準備している」と具体的に話せるかどうかが見られます。

戻る前提で派遣を使うなら、先に決めておくこと

派遣を「避けるべき選択肢」として扱う必要はありません。事情があって一度距離を置く時期は誰にでもあります。ただ、戻る前提なら、入る時点で決めておくと後が楽になることがあります。

  • 期間の上限を先に決める。「様子を見ながら」で始めると、更新のたびに現状維持が選ばれます。1年なのか3年なのかを、入る前に言葉にしておいてください
  • 雇用安定措置の対象になる時期を把握する。同じ組織単位で1年、3年という節目を、契約書と実際の就業場所で確認する
  • 業務の記録を自分で残す。処方せん枚数、科目、在宅の件数、担当した業務。派遣先が変わるたびに記憶は薄れます。選考で語る材料は、その場で書き留めた人だけが持てます
  • ブランクを作らない。派遣と派遣の間が長く空くと、経験の連続性が説明しづらくなります
  • 戻る先の業態を決めておく。薬局に戻るのか、病院を狙うのか、ドラッグストアかで、必要な経験も、紹介予定派遣を使うべきかも変わります

派遣そのもののメリットと注意点は薬剤師派遣のデメリットとは|病院禁止・3年ルール・収入面を解説と薬剤師の派遣・単発という働き方|向いている人と注意点に整理してあります。あわせて確認してください。

よくある質問

派遣期間が長いと、書類選考で落とされやすくなりますか

期間の長さそのものより、その間の業務内容と、戻る理由を説明できるかが影響します。応募先によって見方に幅があるのは事実で、そこは求人ごとに違います。書類では派遣先ごとの規模と業務を具体的に書き、面接で理由を自分の言葉で伝えられる準備をしておくと、期間だけで判断される場面は減ります。

派遣会社に「正社員で働きたい」と伝えると、仕事を紹介されなくなりませんか

雇用安定措置は派遣会社の努力義務または義務として定められているもので、希望を伝えること自体が不利益な扱いの理由になることは想定されていません。むしろ、無期雇用への転換や派遣先への直接雇用の依頼は、条文が挙げている措置そのものです。伝え方としては、「いつまでに」「どの業態で」を具体的にすると、担当者も動きやすくなります。

紹介予定派遣なら病院に入れるということですか

制度上は、紹介予定派遣であれば病院等での調剤業務への派遣は禁止の対象から外れます。ただし、実際にその形の求人が出ているかは別問題で、地域や時期によって大きく異なります。病院を志望するなら、紹介予定派遣を待つより通常の求人に応募するほうが早いことも多いので、選択肢の一つとして知っておく程度が現実的です。

まとめ

  • 「派遣から正社員に戻れない」という話のうち、制度として道が閉ざされているという理解は事実と異なる
  • 派遣法30条は、同じ組織単位で1年以上の見込みがある人に雇用安定措置を努力義務として、3年の見込みがある人には義務として課している
  • 措置には、派遣先への直接雇用の依頼と、派遣会社による無期雇用の機会確保が含まれる
  • 紹介予定派遣は直接雇用への入口であり、通常は派遣が禁じられている病院等の調剤業務にも例外的に使える
  • 選考で見られるのは派遣期間の長さではなく、扱った業務の中身、派遣を選んだ理由と戻る理由、正社員業務への構え
  • 戻る前提なら、期間の上限、雇用安定措置の節目、業務記録、戻る先の業態を入る前に決めておく

参考にした一次資料

本文の条文はこれらの原典を編集部が直接確認したうえで引用しています。

制度や規定に関する記載は一般的な説明です。個別の契約や求人については、契約書と就業条件明示書を手元に、派遣会社の担当者や労働局の需給調整事業部門にご確認ください。

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白衣キャリア編集部

看護師・薬剤師の転職と働き方に関する情報を、中立の立場で整理して届ける編集チームです。記事は編集方針に基づいて制作し、公開前に法令・広告表示のチェックを行っています。制度・統計に関する記述は一次情報を確認のうえ掲載し、公開後も定期的に見直しています。運営会社: 株式会社プロフィット(運営担当: 内藤 啓)

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