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薬剤師が育休明けに「時短はできない」と言われたら|法律が定める義務と、一人薬剤師・小規模薬局での現実的な選択肢

薬局の時計を見ながら育休明けの時短勤務を相談する薬剤師のイラスト

復帰日を伝えたところで「一人薬剤師だから時短は無理」「シフトが組めない」と返された。「薬剤師 時短 できない」と検索したのは、そんな状況ではないでしょうか。

先に結論を書きます。3歳未満の子を育てる労働者に短時間勤務制度を用意することは、育児・介護休業法が事業主に課した義務です。断れるのは労使協定で対象外にしている場合に限られ、その理由が「業務の実施体制上むずかしい」というものなら、事業主には代わりの措置を講じる義務が残ります。「時短はできない」の一言だけで話が終わる形は、法律の想定にありません。

とはいえ、店舗に薬剤師が一人しかいないという事情には、病棟とは別の重さがあります。本記事では、条文が定めていることを子の年齢で整理したうえで、「一人薬剤師だから」という説明のどこを確認すべきか、申出をどう出し直すか、動かない職場で何を選べるかまでを扱います。

「時短はできない」の一言には、法律上の前提が抜けていることが多い

薬局長や上司から時短を断られたとき、返ってくるのは「制度として使えるかどうか」ではなく、「うちの店では回らない」という運営上の説明です。この二つを混ぜたまま受け止めると、本来使える制度を自分から手放すことになります。

育児・介護休業法は、3歳に満たない子を養育する労働者について、申出があれば所定労働時間を短縮する措置を講じなければならない、と定めています。時短勤務制度を設けることは事業主の義務であって、店舗の裁量で決める福利厚生ではありません。

断れる余地がまったくないわけではなく、条文のただし書きにより、労使協定で一定の労働者を対象外にできます。ただし、その理由が「業務の実施体制に照らして時短が困難」というものなら、事業主は代替措置を講じなければなりません。断るにも手続きと条件があり、断った先には別の義務が待っている。相手の「できない」にこの前提があったかが、最初に確かめるべき点です。

法律が定めていること

関係する条文は一つではなく、子の年齢によって使える制度が変わります。3歳未満、3歳から小学校入学前、そして就学前まで併用できる残業免除の三つに分けて整理します(出典: e-Gov法令検索「育児・介護休業法」)。

3歳未満:短時間勤務制度(23条1項)

対象は、3歳に満たない子を養育する労働者(育児休業中の人を除く)。厚生労働省の解説では、制度の中身として原則として1日6時間の勤務区分を設けることが求められています。6時間という選択肢が用意されていないなら、制度として足りていない可能性があります。

対象外にできるのは、労使協定(労働者の過半数を代表する者との書面による協定)で次のいずれかを定めている場合です。

  • 勤続1年未満の労働者
  • 省令で定める合理的な理由がある労働者
  • 業務の性質または業務の実施体制に照らして、短時間勤務が困難と認められる業務に従事する労働者

三つ目の理由で対象外にした場合、事業主は代替措置を講じる義務を負います(23条2項)。条文が挙げているのは、育児休業に準ずる措置、在宅勤務等の措置、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、保育施設の設置運営等です。薬局でいえば、閉局まで残らずに済むよう終業時刻を繰り上げる対応がここに入ります。

3歳から小学校入学前:柔軟な働き方の措置(23条の3)

2025年10月施行の規定です。3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、事業主は、始業時刻の変更等、在宅勤務等、短時間勤務、養育のための休暇、その他の措置のうち2つ以上を講じなければなりません。時短が含まれるとは限りませんが、何も用意しないという選択肢はありません。

就学前まで:残業免除(16条の8)

小学校就学前の子を養育する労働者が請求すれば、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはなりません。「事業の正常な運営を妨げる場合」は除かれますが、この例外は時短の労使協定とは別の仕組みです。

3歳未満3歳〜就学前就学前まで(併用可)
根拠23条1項23条の316条の8
内容短時間勤務制度(原則1日6時間)5種類の措置から2つ以上残業免除
事業主側の例外労使協定で定めた労働者のみ(困難な業務なら代替措置が必要)労使協定で定めた労働者は対象外になりうる事業の正常な運営を妨げる場合
請求の形式申出申出1か月以上1年以内の期間を、1か月前までに請求

※表はスマホでは横スクロールしてご覧ください。

時短勤務の申出と職場内調整、相談先を整理する薬剤師のイラスト

「一人薬剤師だから」「シフトが組めない」は正当な理由になるか

開局時間中に薬剤師が不在では、調剤も服薬指導も止まる。この事情は事実です。ただ、事情が重いことと、法律上の除外要件を満たしていることは別です。確認すべき点を三つ、順に挙げます。

1. 労使協定は存在するか

時短の対象外にできるのは、労使協定でそう定めている場合に限られます。上司や店舗の判断、就業規則の一文だけでは足りず、労働者の過半数代表と結んだ書面の協定が要ります。労使協定がなければ除外そのものが成り立たないため、まず「対象外を定めた労使協定があるか」「その協定で自分の業務が対象外とされているか」を人事に確認してください。小規模な薬局では、協定の有無を誰も把握していないこともあります。

2. 協定があっても、代替措置は用意されているか

協定で「業務の実施体制に照らして困難」として対象外にしている場合でも、事業主は代替措置を講じなければなりません。終業時刻の繰上げや保育の支援など、何かしらの手当てがあって初めて除外が機能します。「時短はできない、以上」で終わっているなら、その先の義務が抜けている可能性があります。

3. 「人手が足りない」は説明になっているか

一人薬剤師の店舗で勤務時間を短くすれば、開局時間に穴が空く。それを埋める手段には、パート薬剤師の補充、近隣店舗からの応援、開局時間の見直しなどがあり、それらを検討したうえで困難だという説明と、検討せずに「無理」と言う説明とでは、重さが違います。人手不足という説明だけでは足りないのは、条文が求めているのが「困難と認められる業務」であって、「困難だと感じている店舗」ではないからです。何を検討したのかを尋ね、答えが返ってこないなら、その説明は法律が想定する水準に届いていない可能性が高いといえます。

この三点は職場を断罪する材料ではなく、確認の順序です。どこが抜けているかが分かれば、話し合いの土台ができます。

申出のやり直し方

口頭で「時短にしたいです」と伝え、口頭で「無理」と返される。最初のやり取りは、多くの場合この形です。これを記録に残る申出に置き換えます。口頭ではなく書面で、期限を切って出し直すことが、次に進むための最小の一手です。載せる項目は多くありません。

  • 氏名、子の氏名と生年月日(3歳未満であることが分かるように)
  • 希望する所定労働時間(例: 1日6時間、9時から16時まで)
  • 希望する開始日と終了日
  • 提出日

様式が職場にあればそれを使い、なければ上記を箇条書きにしたメモやメールで構いません。提出先は直属の上司や薬局長ですが、同じものを人事や本部にも送っておきます。店舗の判断で止まっている話と、会社として断っている話は別だからです。控えは手元に。

書面を出したら、前の章の三つの確認事項——労使協定の有無、対象外の根拠、代替措置の内容——を尋ね、返答もできれば書面かメールで求めましょう。

それでも動かない職場での選択肢

書面で申し出て根拠を尋ねても、状況が変わらないことはあります。取れる選択肢を負担の軽い順に並べます。並行して進めても構いません。

労働局の雇用環境・均等部に相談する

育児・介護休業法に関する相談窓口は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です(参考: 厚生労働省「雇用環境・均等局」)。持参するのは、申出書の控えとやり取りの記録。なお、時短の申出や利用を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、法律で禁じられています(23条の2)。

残業免除だけでも請求する

時短の話が動かなくても、残業免除は別に請求できます。残業免除の請求は時短とは別の権利で、小学校就学前まで使え、根拠条文も除外の仕組みも異なります。所定の時間で退勤できれば、閉局作業の残業でお迎えに間に合わない、という日々の消耗は減ります。1か月以上1年以内の期間を定め、開始の1か月前までに請求してください。

店舗異動を打診する

複数店舗を持つ会社なら、薬剤師が複数いる店舗への異動で時短が現実的になることがあります。一人薬剤師の店舗で6時間勤務を組むのが難しくても、二人体制の店舗なら早番として組み込める。法律上の代替措置とは別の運用による解決ですが、話し合いの選択肢になります。

パート転換は「時短の条件」ではない

「時短にしたいならパートになってほしい」と言われることがあります。パート転換は時短の条件ではないため、正社員のまま申し出ることができ、雇用形態の変更に応じる義務はありません。自分の判断でパートを選ぶのは別の話ですが、「そうしなければならないから」ではなく「そうしたいから」で決めてください。

転職を考える

ここまでの手を打っても、話し合いに応じない、同じ説明を繰り返すだけ、という職場もあります。時短制度が整った職場へ移ることは選択肢の一つですが、順序は最後です。制度の確認と申出をせずに転職を先に選ぶと、次の職場で同じ説明を受けたとき、同じ場所で立ち止まることになります。面接では「3歳未満の時短制度の運用実績」「一人薬剤師の店舗での対応」を尋ね、答えの具体性で職場を見分けてください。

よくある質問

勤続1年未満でも時短は申し出られますか

労使協定で勤続1年未満の労働者を対象外と定めている場合は、対象になりません。協定がなければ勤続年数を理由に断ることはできない、というのが条文の構造です。まず協定の有無を確認してください。

子が3歳を過ぎたら、時短は使えなくなりますか

法律が短時間勤務制度そのものを義務づけているのは3歳未満までです。3歳から小学校入学前は、始業時刻の変更や短時間勤務などの措置から事業主が2つ以上を用意する仕組みになり、残業免除は小学校入学前まで請求できます。法定を超えて対象年齢を広げている会社もあるので、就業規則も確認を。

時短を申し出たことで、評価や配置が不利になることはありますか

短時間勤務の申出や利用を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、法律で禁止されています(23条の2)。扱いが変わったと感じたら、経緯を時系列で記録し、労働局への相談材料にしてください。

まとめ

  • 3歳未満の子を育てる労働者への短時間勤務制度は、事業主の義務
  • 対象外にできるのは労使協定で定めた場合のみ。「困難な業務」が理由なら代替措置が必要
  • 「一人薬剤師だから」は、協定の有無・代替措置・検討の跡の三点で確認する
  • 申出は書面で、子の年齢と希望期間を明記し、人事にも写しを送る
  • 動かないときは、労働局への相談、残業免除の請求、店舗異動、転職の順で検討する

「できない」の一言で選択肢が消えたように感じても、法律はそう扱っていません。まず一枚の書面から始めてください。

参考にした一次資料

本文の統計・条文はこれらの原典を編集部が直接確認したうえで引用しています。数値は調査年の更新に合わせて見直します。

制度や規定に関する記載は一般的な説明です。個別の状況については、勤務先の規定や労働局などの専門窓口にご確認ください。

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白衣キャリア編集部

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